毎日のお出かけや通所・通院の際、玄関前の階段移動に大きな負担を感じていらっしゃるご家族は少なくありません。今回は、千歳市にお住まいのI様邸の事例をご紹介します。車椅子を使用されている30代の娘様と、毎日の移動を必死に支えてこられたご両親。住宅リフォーム(風除室の延長)という画期的なアイデアと、ミリ単位の工夫によって、安全で快適な移動環境を実現した事例です。
千歳市にお住まいのI様邸では、30代の娘様が日々の移動の際に車椅子を使用されています。娘様は生まれた時は未熟児で、体への障害と知的障害が残ってしまいました。
毎日、福祉施設へと通うためには玄関前にある「直線8段の階段」を通る必要があります。これまでは、階段を降りる際はご両親か施設のスタッフ様が娘様を背負って降り、登る際は両側から必死に支えて登るという日々を送られていました。毎日のこの「おんぶや抱っこ」での階段移動は、ご両親にとってもスタッフ様にとっても非常に大きな体力的な負担となっていました。
設置を検討した玄関前の8段の階段は、ほぼ「屋外階段」です。元々、6段目から上のみに風除室(フード)がありましたが、屋外のままでは雨や雪、冬の寒さの影響をダイレクトに受けてしまい、屋内用のいす式階段昇降機を設置できません。
もちろん屋外用の階段昇降機という選択肢もありましたが、北海道の厳しい冬の雪や凍結、日々のメンテナンス性を考慮すると、やはり風除室内に設置するのがベストです。そこで今回、風除室を最下階まで延長し、階段全体を完全に覆うことで、屋外階段を「屋内空間」へと生まれ変わらせたのです!これにより、雨風や雪を完全にシャットアウトした状態で、屋内用の直線階段用いす式階段昇降機「エスコートスリム」をベストな環境で設置することが可能となりました。
▲風除室を延長した階段の様子
施工において、もう一つの大きな課題となったのが下階の風除室の扉でした。階段の1段目のすぐ目の前に風除室の扉があるため、通常のレールをそのまま伸ばしてしまうと、レールが扉とぶつかって扉が閉まらなくなってしまいます。
そこで、今回は「折りたたみレール(手動でレール先端が折れ曲がる機構)」を採用しました。昇降機を使うときはレール先端をパッと伸ばして、最下階の敷地(地面)まで安全に降りられる設計にしつつ、レールを折り畳んで風除室の扉もしっかりと閉められる動線を確保しました。
設置完了後、実際に娘様に試乗していただきました。まず、お母様が一番心配されていた「下階の風除室の扉に足が当たってしまうのではないか?」という点については、事前の緻密な計算通り、足が当たることもなく全く問題ないとの嬉しい声をいただくことができました。
そして何よりご家族を驚かせたのは、娘様の変化でした。知的障害もある娘様ですが、スタッフからの取扱い説明を一生懸命に聞き、なんと上昇時・下降時ともに、ご自身の手で昇降レバーをしっかりと操作して動かすことができたのです!これには付き添っていたご両親も驚き、喜んでいただきました。
これまでは「おんぶ」や「抱っこ」で誰かに運ばれるだけだった階段移動が、これからは自分の意思と操作で、安全に快適に移動できるようになります。I様ご家族の毎日の介護負担を劇的に減らすだけでなく、娘様の「自分でできた!」という喜びと自立を支える、とても温かい施工事例となりました。