いす式階段昇降機を設置するには、直線階段の場合は75cm以上、曲線階段の場合は80cm以上の階段幅が必要です。
しかし、実際にはそれよりも狭い階段の昇り降りに困っている方もいらっしゃるでしょう。
今回は、そのような方の参考となるように、階段幅が狭く一度は設置を断念したT様邸の対応事例を紹介します。
T様邸で階段の昇り降りにお困りだったのは、ご主人と奥様のお二人です。
ご主人は週に3回、人工透析に通われており、帰宅時の階段の昇り降りが大きな負担になっていました。
奥様も足腰が弱く、階段を昇るときは手すりにつかまり、降りるときはお尻をついて一段ずつ降りるという状態でした。
さらに、T様邸は1階が車庫、2階が居住スペースという構造のため、日常生活を送るうえで階段の昇り降りは避けて通れません。
当初はホームエレベーターの設置を検討されたそうですが、費用面で折り合いがつかず断念されました。
そこで福祉用具貸与事業者様に相談したところ、いす式階段昇降機を紹介されたとのことでした。
設置予定場所は、1階の車庫から2階へつながる直線階段です。
現地調査で確認したところ、階段は鉄骨階段で、階段幅は70cmでした。
設置に必要な階段幅75cm以上を満たしておらず、このままでは設置できない状態であったことから、やむなく商談はいったん白紙に。
しかし後日、T様より「なんとか階段昇降機を設置することはできないか」と、福祉用具貸与事業者様を通じて改めてご相談をいただき、再検討することになりました。
T様邸の階段にいす式階段昇降機を設置するためには、いくつかの課題を解決する必要がありました。
主な問題点は、次の3つです。
問題点①:必要な階段有効幅を確保できない
問題点②:上階の床の奥行きが狭く、乗り降りするスペースが取れない
問題点③:上階の開口部が狭く、階段昇降機に乗ると天井と頭が接触してしまう
このようなケースはそのまま設置できないため、改修工事が必要です。
今回の事例で改修した内容は以下のとおりです。
階段幅を確保するため、鉄骨階段から木製階段へ架け替えました。

▲架け替え後の階段
上階の床は奥行きが30cmしかなかったことから、70cmへ拡張して十分な乗降スペースを確保しました。

▲床面の奥行きを30cmから70cmへ拡張
昇降時に天井と頭が接触しないよう、建築業者様と相談のうえ、可能な範囲で開口部を広げました。

▲拡大後の上階開口部
これらの改修内容を昇降機メーカーと共有し、問題なく使用できることを確認したうえで進めた結果、直線階段用いす式階段昇降機「エスコートスリム」の設置が無事完了しました。

▲設置後の様子(下階・上階乗降位置)

▲左:上階停止位置 右:上階収納位置
設置工事に伺った際、ご主人と奥様は、階段昇降機の設置を心待ちにされているご様子でした。
設置後は大変満足された様子で、玄関へつながる外階段にはロードヒーティングが入っているものの、「これからは外階段は極力使わず、外出時は車庫から昇降機を使って出入りしたい」と話されていました。
当日、奥様が室内の階段で物を持って降りている際、足を踏み外して転倒されるという出来事がありました。
病院で検査を受けた結果、幸いにも大事には至りませんでしたが、「階段の昇り降りが怖くなった」と、不安そうに話されていたのが印象的でした。
車庫内には飲み物などをストックしているとのことで、今後はそれらの荷物も階段昇降機を使って上げ下げされるとのことです。
今回の出来事は、私たちにとっても、階段昇降機の必要性を改めて強く感じさせられる出来事となりました。
今回の事例のようにそのままでは、いす式階段昇降機の設置が難しいケースでも、工夫や改修によって対応できる場合は少なくありません。
「階段が狭いから無理だろう」と諦めてしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。
私たちと一緒に、設置の可能性を探してみましょう。